2010年04月27日

投資タイミング

今更ですが、日本の電機機器メーカーの凋落に対し、サムソンの躍進は目を見張るものがあります。この原因として、よく言われているのが、新興国に対し低機能・低価格といった需要に適合した商品開発ということが言われておりますが、もう1点極めて重要な差があります。特に半導体生産設備投資を見れば分かり易いのですが、日本メーカーは市況が良くなると設備投資を行うのに対し、サムソンは極めて需給(市況)が悪い時に大型設備投資を実行します。いわゆる逆張りなのです。市況の悪い時に設備投資をすることにより、市況回復期においてフルにその効用を受け、日本メーカーに対しマーケットシェアを差をつけてゆく・・・。これに対し日本メーカーは、市況の良い時に設備投資の意思決定を行うため、当該設備が稼動する時には右肩下がりで、過大設備となってゆき、最悪の意思決定をする場合においては、どん底で設備圧縮を行なう・・・。まさに最悪ですね。

事業フィールドが、景気等の波動を受けているのであれば逆張りが正しく、本当の中期的トレンドに従ったものであればトレンドフォローでの投資が正しいのあるのですが、大きく下がっている時の精神状況は良くないものであるため、景気波動のものも中期トレンドのものと錯覚する方が圧倒的に高いと思います。逆に大きく上がっている時は、この素晴らしい時が永遠に続くと錯覚(=この状況では素晴らしいのが当たり前と感覚がずれだします)してしまい、やはり景気波動ではなく中長期トレンドで上がっていると思いがちになるものです。

人間の生まれ持った環境への順応性の高さといった本能により、間違った意思決定が行なわれ易いということを認識すると物凄いアドバンテージになります。

特にライバルがいる場合においては、多くのライバルが素直に自分の生まれ持った本能に大きくバイアスをかけられて意思決定してしまうため、この本能により歪められている部分がないか意識して修正することにより、決定的な差別化ができるのです。

先に述べた例(サムスンと日本メーカー)のように、投資の意思決定をより正しく行なうことはまさに企業の命運を決めるものであるため、このことは企業経営の最も重要なものの一つであります。


by 山沢
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2008年11月05日

ストックオプション

ストックオプションはキャッシュアウトなしに経営者及び従業員に報酬を与え、かつ、業績を良くして株価を上げるインセンティブを与える制度であり、この制度を活用している企業は多々あると思いますが、個人的には著しい欠陥を有しているものだと思っております。現在のような株式市場が暴落している時は分かり易いのですが、株価は業績と需給によって決まるものです。よって、経営者や従業員の努力や能力によるものだけでなく、株式市況や景気動向に依存する割合も相当程度大きいのです。よって、経営者や従業員の努力や能力に関係なく、株式市況が良くなり株価が上がると、その享受を一方的にストックオプションを付与された者は享受し(本来これは株主が享受すべきものです)、下落局面には当然ですが全くその損害を受けることはありません。よって、いい時だけ享受し悪い事は被害を被らないという制度なのです。こうした株価下落局面で、ストックオプションの行使価格を切り下げながら複数回発行し続け、株価のリバウンドにより株価が上昇した場合においては、仮に下落前の株価とリバウンド後の株価が同額で株価が全く上がっていない状況であるにもかかわらず、ストックオプションを付与された者は多額の利益を享受してしまうのです。
こうした事を考えると、資金がないのであれば、エクイティファイナンスを行った上で、業績(対前期比、対予算比等)に応じて、キャッシュアウトする賞与等を支払うのがありうべき姿であり、株主価値が毀損しないことになると思います。
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2008年07月31日

企業価値と一株当り企業価値

良く企業価値の最大化を経営指針としているといった話を聞きます。
これは実は大きな間違えなのです。目標とすべきは、一株当り株主資本価値の最大化となります。
なぜなら、単に会社が借入を行い入金したら、企業価値は借入を行った金額と同額増加します(=企業価値とは借入金と株主価値の合計だからです)。
では株主価値の最大化を目標とすればいいかというとこれも違います。なぜなら、単に有償増資をすれば、同額だけ株主価値は上がるのです。株主価値が増加すると株主はハッピーといえるのでしょうか?
株価又は一株当り利益、安全性が下がる場合も多々あるからです。
よって、経営者は一株当りの株主資本価値を最大化する必要があります。
現状の低迷している株式市場等考えれば、株主価値は減少しますが、自社株買いが最も「一株当り株主資本価値」を高くする投資?といった場合が多いと思います。


山沢
posted by Japan Corporate Valuation Institute,Ltd. at 17:00| Comment(0) | TrackBack(0) | コーポレートファイナンス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年07月02日

PBR

ご存知の通り、PBRとはPRICE BOOK VALUE RATIO の略であり、具体的には株価÷一株当り純資産金額で算出される。最近、このPBRが1倍を割っている公開企業が増えてきた。基本的に1倍を大きく下回っているということは、会社清算して分配した方が良い。又は当該業界に進出する際、会社を買収した方が再調達価額より低額の投資で済むと考えられます。ここで、特に後者について考えてみれば、PBR1倍以下の業種というのは新規参入者がない状況であり、マーケットサイズに比べ参加者が多い業界であるため、これから淘汰されてゆく業種とも考えられると思います。こうして考えるとPBR1倍以下の業種が著しく増えてきているといったことの日本の将来への厳しさを感じるとともに、もし、自らがこうした業種であった場合においては、他社との統合による生き残りを最重要課題として検討する必要があるといったことなのかなと思います。

by 山沢
posted by Japan Corporate Valuation Institute,Ltd. at 12:39| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月14日

リスク

先日の投資アドバイスした件について、その担当者の方がその投資に自信があることもあり、更に調査をすればより的確な利益を予想できると思われたのですが、こうした調査に対し前向きでないようでした(優秀な方なので与えられているミッションが膨大みたいで・・)。そこで、もしや?と思い、その会社の担当者の方に、「仮に100万円投資した時の予想(期待)利益が10万円の案件が2つあり、片方は50%の確率で損失-30万円となり、50%の確率で+50万円の利益となる案件で、もう一方は50%の確率で-10万円の損失となり、50%の確率で+30万円の利益となる案件とすると どっちに投資する?」と聞いたところ、前者との答が返ってきました。この担当者の方にとって、リスクはコストという意識があまりなかったようです。そこで、リスク自体についても確実に墜落する飛行機はリスクがないといったことから説明してゆきました(確実に墜落するのであれば、墜落したくない人は乗らなければいいだけですので・・)。投資事前調査は、予想利益の期待値をより正しく行うといったことも、もちろんとても大切なのですが、予想利益の範囲を狭めるといったことにおいてもともて重要なことなのです(リスクといったコストを少なくし、費用対効果をより高いものにすることは重要)。
posted by Japan Corporate Valuation Institute,Ltd. at 10:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 投資意思決定 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月12日

DCF法を使った意思決定の注意点

ここ数日、あるスポーツ関連施設への投資について、シミュレーションを行い、アドバイスを行っています。
一般的に割引率を決定し、た上で、DCF法による評価を行う場合が多いと思うのですが、割引率自体が絶対的なものでなく、特に当該プロジェクトに対する割引率を算出することは不可能なケースが多いと思います。

よって、まず、第一に割引率を決定して評価金額を算出するのではなく、当該プロジェクトへの投資金額とDCF法による評価結果が一致する IRR (投資利回り)を算出して、その投資利回りから 投資すべきか否かを判断する方が適切な場合が多いと思います。

また、将来の収益を予測するについて、主たる影響を与える項目(今回のケースでは施設の稼働率でした=バリュードライバーと言います)について、どういった数値になるとどういった利回りになるかといったことを一覧表として検討することが現実的です。

これにより この投資であれば、利回りとして最低欲しいと思う利回りを達成するには、例えば稼働率が何%以上かといった具体的な判断を行い易いものに変わるからです。
また、今回検討した投資案件がそうだったのですが、複数のケースを検証したために、休日の設備稼働率次第で投資利回りが大きく影響される(=この部分の予測の重要性が高い)ことと、予想通りの稼動率であれば、非常に大きな利益を上げられる反面、予想稼働率の80%をきっただけで、大きな赤字となることが判明しました。

このように金額でなく、バリュードライバーを見極め、それ自体の変化毎の利回りを複数のケースで求めて、判断し易く、かつ、リスクを把握して投資は判断された方が一般的なケースにおいてはいいと思います。
posted by Japan Corporate Valuation Institute,Ltd. at 11:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 投資意思決定 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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